それがしブログ

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「楽しむこと」の是非を問う 〜エンタメ制作現場の搾取とコンテンツ消費について

アニメ、ゲームをはじめとした日本におけるエンタメコンテンツの制作現場が概ね惨憺たる状況にあることは、おそらく皆さんの知るところであるかと思います。

 

低賃金、非正規雇用、度を超えた残業、労働基準法を無視した働き方、倫理観の欠如、ありとあらゆるハラスメント……本来夢を見せる側の人々が夢を見る余裕もない有り様です。もちろん全ての現場がそうとは言いませんが、中小以下の企業では殆ど全てが当てはまるのではないでしょうか。

 

最近もこんなニュースがありました。

 

カプコン、コロナ下で社員に事実上の出社強要か…ゲーム業界、労働環境改善されない特殊事情

https://t.co/44WePbJu1s

経営側がコンテンツの作り手たる社員らをどう扱っているのかがよくわかる内容です。人権のなんたるかを理解していないとしか思えません。

 

過去の記事でも書きました通り、自分自身もあまりというかとてもいい環境で働けていたとは言い難いです。

危険なのは、これが常態化しており、内からも外からも「こういう業界はそんなものだよね」と思われてしまい、改善の兆しが見られないところです。

今回問題にしたいのは、そういった実態を知りながらも果たしてコンテンツを楽しめるものなのか? という点です。

 

搾取を無視してコンテンツを評価する欺瞞

繰り返しますが、前提として、コンテンツを制作している末端の社員はなんらかの形で搾取されていることが殆どです。それを知らない人が殆どいないであろうことも先に述べた通りです。そんな環境の中で作られたコンテンツをただ「面白い」「楽しい」と消費する現状、作り手と受け手との間に健全な関係が築かれていると言えるのでしょうか?

コンテンツを評価するのは消費者の自由ですし、むしろ盛んに行われるべきことではありますが、人権侵害を知りながらそれを見ないふりしてただ楽しむために消費するのは欺瞞と言えるのではないでしょうか?

 

問題を抱えた企業を野放しにしつつ作品の倫理的な正しさを褒める矛盾

ニュースになったカプコンのように、問題を抱えた企業はとても多いです。しかしながら、それを内部から変えることはとても難しいのです。根本的に変えるためには外部からの圧力が必要になります。しかし、それがなされることはとても稀です。

それどころか、問題を抱えた企業が販売しているコンテンツを「倫理的に正しい」と賞賛することさえもあります。もちろん、作品と企業は別で、その評価が間違っているわけではありません。それでも、それは視野を広げて見れば矛盾と言えるでしょう。倫理的に正しくない場所から生まれたものが真に倫理的に正しいはずがあるわけがないのですから。そしてその矛盾を知りながら、本当に心から作品を楽しむことはできるのでしょうか?

 

以上、コンテンツの消費にまつわる欺瞞と矛盾について書いてきました。
勘違いしてほしくないのですが、だからと言ってコンテンツを消費するな、と言っているわけではありません。ただ、自分が好きなコンテンツが何かを犠牲にしていないか、一度立ち止まって考えて欲しいのです。
そして何か問題が見えたなら、できればそれを企業に伝えることを諦めないで欲しいと思います。