それがしブログ

ゲームと美少年と姉弟と草の根人権活動

「非モテ」という概念を破壊せよ

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FGOのバレンタインイベントについて現時点(2/13)で感じていることをつらつら。

※この記事は2020年に書いたものです。

 

イベントの内容について

予告から“非モテ救済”なるあまりにもあんまりな単語が用いられており失笑ものだったんですが、もしかしたら最終的にはポジティブな読後感を与えるものになっているかもしれないと思い、静観していました。

しかしいざ始まってみたらますますひどくて「自分はなぜこのゲームをやっているんだろうか?」と、幾度目かの自問自答をしました。間桐桜が好きだからなんですが、そろそろそれだけの理由では耐えられくなってきました。大奥イベントはつまらなかったしパールヴァティーの扱いはあらゆる意味で微妙だし。

いくら戯画化された世界とはいえ「モテないことが罪とされ、バレンタインにチョコをもらえなかった男性は三等市民にされ、一年間重労働を強いられるなどの過酷な扱いを受けるディストピア」って……そこまで「“非モテ”である自分たちはこんなに酷な扱いをを受けている」と認識しているんでしょうか。誇張されている設定にしたってどんな認知の歪みだよとつっこまざるを得ません。

その上、現在そのディストピアで迫害されている人たちを救う方法として提示された方法が

「“寂しい男子たち”に自分たちがチョコを配って全員に行き渡ればいい」

でした。それがし、目眩がします。

しかもですよ、それを平安時代の宮中における男性中心社会を生き抜き、マンスプレイニング(相手を女性と見るや上から目線で物申してくること)おじさんたちをバッタバッタと斬り伏せてきたと作中で触れられている清少納言提言するわけですよ。

ティーチ(に似た誰か)によるセクハラ正当化をモラルハザードと言いのけたキャラが!? この決断を!? するのか!?!? ハザード起こしてんのはお前んとこの会社だよ!!

その上、それが「三等市民がいなくなれば現体制は維持できないから」という理由で採用されてしまったので、開いた口が塞がりませんでした。このゲームのを開発陣はアガルタで受けた数多の批判から何も学んでないようです。

相当なユーザー数を抱えたコンテンツがこういうことをするという意味を問いたい。つい最近も「アマゾネスの女王」がマイナスの意味で“女々しい”なる単語を用いたことを「なんだこれは」と思ったばかりだというのに……

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そもそも「非モテ」とはなんなのか?

ここで提示されている“非モテ”とは、女性に(性的な)好意の対象として見られないことにコンプレックスを抱いているシスヘテロ男性のことを指すようです。

毎年の行事だからと思考放棄せず考えてほしいんですが、「チョコをもらわなければ“非モテ”として迫害される」という考えはどこから来ているのでしょうか? そして実際に迫害されるとしたら何が問題なのでしょうか?

原因は明白ですね。「女に“モテ”るのが正しい男性」という歪んだ価値観、「女性を獲得することは“男らしい”」と定義するマスキュリニティを基盤とした構造の問題です。

世間が勝手に「モテない=悪」というレッテルを貼ること、“非モテ”を称する人々がそれに振り回させられていることが問題なのであって、破壊するべきはその価値観です。自己卑下する必要は全くないですし、“モテ”る男性やチョコレートをあげる立場の女性を妬んでも「バレンタイン」をなくそうとしても根本的解決には至りません。

FGO清少納言の言うような方法も結局“非モテ”男性を「寂しい男子達」と見下しており、たとえそれでその世界の支配構造が維持できなくなったとしても、唾棄すべき価値観は残ったままです。

 

悪しき「男らしさ」という概念から解放されたい方にはこちらの本がオススメです。

『ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか 』https://www.amazon.co.jp/dp/4866470887/ref=cm_sw_r_cp_api_i_e-mrEb3NDTRM3

 

ちなみに個人的に「バレンタインデー」はどうでもいい日ですが、おそらく会社など組織で働く女性にとっては、社内で何か男性社員へのプレゼントを用意しなければならない苦痛を味わう日ではないかと思います。なのでなくなってくれてもいいですよ。商業的戦略? 知るかそんなもの。

 

非モテ」概念が排除する人々

上にも書きましたが、女性にチョコレートをもらえない男性のことを“非モテ”であり弱者だという考えは、世の中にヘテロセクシャル(さらにいうとシスジェンダー)の人間しか存在しないことを大前提としており、非常に排他的です。

すぐに“モテ”“非モテ”の呪縛から逃れられないとしても、そのことは自覚しておかなければなりません。

簡単に感想を書くつもりが予想外の長さになってしまったっため、この辺りで締めます。

 

追記:偏見の助長と醜悪な茶化し

2/17時点でこのイベントの評価は持ち直すどころか下がる一方です。

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どこまで捻れた認識を晒そうというのか……恋愛が成就せず苦しむ人もいるが、生涯恋愛しない人もいる。いずれにしろ人間の価値は等しい。それは全ての大前提です。

“彼女”がいたことがない人に「そんなに」と言うのは恋愛至上主義および異性愛至上主義を強化する行為です。なにも考えずに言わせているのでしょうが、作り手の浅薄さが露わになっています。

このような世界設定ならば、“モテ”“非モテ”“リア充”……そんなものに振り回される必要がないと示すべきではないのでしょうか。

 

極めつけはこれ。

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“ある属性を病気とみなして矯正する施設”をこのような流れで出していいものなのですか? “非モテ”なる作られた立場と、これまで矯正施設で迫害されてきたマイノリティとが同じようなものだとでもいうのでしょうか?

真面目な話題として扱っているならばともかく、このようなバカバカしい与太話の中で用いるなど、悪趣味な茶化しにしか見えません。読んでいて気分が悪くなります。軽率すぎます。

以上。そろそろイベントシナリオは終わりそうですが、どうやら評価が覆ることはなさそうです。