それがしブログ

ゲームと美少年と姉弟と草の根人権活動

会社に手紙を出しました。〜ゲーム業界で働く皆様、ゲームを楽しむ皆様へ〜

はじめに

ベリー苦しめます。

 

 

私から皆さんへのプレゼントはアンケートで同率一位だった業界暴露話……ではなく、休職期間満了につき退職した会社へ送った手紙の全文公開です。

私はずっとゲームの開発会社で働いており、この会社は二社目でした。病気による休職も二度目です。一社目の休職中途方にくれていた私を引き抜いてくれた恩のある会社なのですが、残念ながら表現者として許容できない点が多かったために病状が悪化するという結果になりました。

 

本当は一社目の労働環境の劣悪さ、社員への対応の酷さ、パワハラセクハラエイハラレイハラ全部盛り、みなし残業代込みで20万に届かない給料(手取りではない)、300時間を超える労働時間、密室での凄まじいパワハラ発言……などなどの詳細も実名で暴露したかったのですが、なにぶん記録する間も無く会話も録音できず証拠なしだったので、「社会的に抹殺されるのは私の方だから、やるなら健康になってから弁護士をつけて戦え」と言われてしまいました。無念です。

しかしそんな倫理観が崩壊した会社が開発しているゲームがウケているのは非常に業腹なので、私の普段の言動からなんとなく「アレか」と察していただけると幸いです。Twitterではワードミュートしています。自分への扱いは勿論許せませんが、何人もの犠牲者が出ているので見ていられません。

 

この手紙を公開する意図は「表現に携わる者の責任とは何か」を改めて考えるため、「諦めずに訴え続けることに意味がある」と伝えるためです。

手紙は無視されるか最悪怒られることを覚悟して出しましたが、意外にも「重く受け止めます、言ってくれてありがとうございました」という返事をもらえました。

それが本心かまでは分かりませんが、少しでも届いていればいいと思います。願わくばゲーム業界で働く人々の意識が少しでも変わりますように。そして今苦しんでいる人たちが少しでも楽になりますように。人の誤りを指摘する勇気を持てますように。

 

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※この文書は「業界への問題提起として、ある程度修正を加えた上でネット上に公開することを想定している」と伝えた上で、退職した会社に送った手紙です。個人情報や守秘義務に抵触する部分を匿名にすることを条件に公開する許可を得ています。自分のルーツについて触れている部分は隠すことも考えましたが諸々考慮してそのまま残しました。

 

 

Α社のみなさんへ 

お疲れ様です。ただよしです。

短い間でしたが大変お世話になりました。表に出るような仕事がほとんど出来ずじまいだったのは残念ですが、B社時代とは異なるやり方について色々と勉強させていただきました。特に労働環境が大幅に改善されたことに関しては大いに感謝しております。

企画途中で止まってしまったタイトルにつきましては、もし今後動かす予定があるようでしたら、お手伝いさせていただきたいと思いますのでお声がけいただければ幸いです。仮に今後一切動く予定がない場合も、ご連絡いただければと思います。

 

近況についてですが、残念ながら退院後も体調は依然として良くないままです。ひとまずなるべく安静にして過ごしております。まだしばらく仕事をすることは難しそうですが、ゲーム作り自体はやめたくないため、今後も何らかの形で続けていくつもりです。

 

さて、今回このお手紙を出させていただいたのには理由があります。自分の病気は自然発生したものではなく、明確な原因があって悪化したことを改めてお伝えする必要があると考えたからです。

 

簡単にいうと、日本のゲーム業界全体の人権軽視と差別問題と、

ゲーム開発者をはじめとするエンタメコンテンツ産業従事者の倫理観の欠如

について深刻に悩み、ストレスを抱えた結果です。

 

自分はエスニックマイノリティ*1(特に聞かれなかったので言っていませんでしたが、いわゆる在日朝鮮人です)として生まれたことで普段から差別を受けやすいこともあり、差別や人権問題については元々関心がありました。しかし、ゲーム業界で働いているうちに、自分たちが表現したいものを優先するばかりで人権を軽視している方が多かったり、そもそも全く関心がなかったり、積極的に差別に加担する方も少なくないということを身を以て知りました。

 

表現の自由とは何よりも優先されるものと勘違いしている人もいるようですが、差別や偏見は冗談ではなく人を殺すものです。表現に携わる人間がそのことを正しく認識していないのは大問題だと思いませんか? 言葉や絵、映像がもつ力の強さを知っているからこそ、ものづくりに関わる人間として生きているはずです。

 

公の場で表現すること(発言も含みます)には相応の責任が伴います。どうしても差別を受ける人たちについて言及したいことがあるのであれば、まず正しい知識を得る努力をするべきであるし、被差別当事者の方々を極力傷つけないような表現を目指すべきです。そして、それでも批判を受けたときは真摯に受け止めるというのが本来とるべき態度です。それを怠るということは、被差別当事者の人権侵害に他なりませんし、本当なら誰でも楽しんで遊べるはずのゲームをプレイする機会を、その人たちから不当に奪うということです。

 

その他、社会情勢の悪化やそれに伴うヘイトスピーチ*2の蔓延なども影響しています。

このような社会だからこそ、より一層表現上のマイノリティの扱いについて細心の注意を払うべきだというのに、ゲームに限らず、現在の日本のエンターテインメントは昔のまま時が止まってしまったかのように古臭く差別的な表現に塗れています。

そればかりか、倫理的な問題について批判された途端、「批判するような奴らは表現の自由を奪おうとしている」等と罵倒が殺到するようなことが珍しくありません。しかも、罵倒する人々が守りたがっている表現というのは、自分たちにとって都合の良いものでしかないというのが実情です。

最近も、自分らに都合の悪い表現の話題になるや著名なクリエイターたちが軒並みおかしな発言をするという事件(あいちトリエンナーレの表現の不自由展に関する事件です。ご存知ないようでしたら調べてみて下さい)が起きたばかりです。作品と人格は別と言いますが、差別主義者となれば話は別ではないでしょうか?

 

このような惨憺たる状況で、こういった人たちが多く集まるような業界で、本当に人を楽しませるゲームを作れるのか? そこに所属することは差別に加担することになるのではないか? そのことについて考えるにつれてどんどん症状は悪化していきました。

 

前置きが長くなってしまいましたが、以下、主にA社在籍中に悩みを深刻化させる切っ掛けになった出来事について具体的に記します。自分にとって、ひいては表現に携わる人々にとって非常に大切なことなので、どうか面倒がらずにお読みいただければと思います。

 

①aさんが「男同士の恋愛は気持ち悪い」と言った件

最初に気になったのはこの件でした。とある会話でのことですので、aさんとしては、内輪での何気ない発言のつもりだったのかもしれませんが、会話をしている店内に当事者の方がいないとも限りませんし、私たち自身や、あるいは身内の中にいる可能性もあります。その場合、どう感じるかを想像したらそんなことは言えないのではないでしょうか。

当時もそういった説明を自分なりにしたつもりでしたが、aさんは「そういう考えをする人が周りにいなかったから面白い」という反応をされました。私は決して議論ごっこや論破遊びをするつもりで指摘したのではありません。認識を改めて欲しい一心でできるだけ丁寧にどこが問題なのかを解説したつもりだったので非常に残念に思いました。

そもそもは「自分が男に好かれたらと思うと気持ち悪い」ということが本旨のようでしたが、それを聞いた時、私は次のことを連想しました。一橋大学の男子学生が、告白した同性にアウティング*3され、それを苦に自殺してしまった事件です。決して遠い昔の話なんかではなく、比較的最近のことです。どうしてそのようなことになってしまったのか、公共の場で「気持ち悪い」と言ってしまうことがどういう結果をもたらし得るか、少しでも良いので考えてみてください。

 

② 後日、「ああいうことは二人きりの時にやって欲しい」と言われた件

①の件でaさんへの説明が長引いてしまい、空気を悪くしてしまったことについて、後日私がbさんに謝罪した際に言われた言葉です。仕事の場でそういった話題は好ましくないと考えられているのかもしれませんが、(真面目な話題ですし、個人的にこの考えには賛同できません)あらゆるハラスメントがそうであるように、差別発言というものは、なされた瞬間にカウンターを行わなければほぼ効果がありません。そうしなければ「今、まずいことを言ってしまった」と気づかせることは出来ませんし、批判がないまま放置してしまうと、周りにいる被差別当事者の方々に大きな傷を負わせてしまうことになります。

もし、今後似たようなことがあった場合、可能なかぎりで構いませんので、その場で差別発言を批判するようにしてみていただきたいです。お願いします。

 

③社会全体が抱えるミソジニー*4についての反応

①の時も話題にのぼりましたが、現代日本、とりわけエンタメコンテンツ業界のミソジニーは非常に激しく、それが原因となってトラブルが発生することは少なくありません。

女性差別に関しては、構造の問題が非常に大きく、「既存の仕組みがそうなっているから意図せず差別に加担してしまっている」という場合が多いです。これについては東大の入学式で行われた上野千鶴子さんの祝辞が記憶に新しいです。cさんが仰っていた「最近はなんでもセクハラになってしまう」という典型的な発言もこれに端を発するものと考えられます。

しかし残念ながら、業界の前線で働く人たちはそういった問題について全く気付いていないどころか、あるいは軽視しているような人が多く、積極的に女性蔑視的な表現を用いたがるところがあります。

 

aさんは覚えていらっしゃらないかもしれませんが、世の女性差別問題について、「じゃあどうしたらいいと思う?」と私に質問されたことがあります。本来、抑圧される側に解決策を求めることは不誠実です。私は無難な回答として「まずは政治家を増やすべきだ」と答えたと記憶していますが、仮に私が黙り込んでしまった場合はどうなっていたでしょうか。

多くの場合、このような質問をされた時に適切な回答が出来ないと、「自分だって解決方法がわからないんじゃないか」と更なる抑圧を受けることに繋がります。間柄や力関係によっては答えにくい場合もありますし、まずそれを留意していただければと思います。

 

bさんはTwitterでよく目にする話題について話した際に、フェミニズムについて多少の関心があるようなことを口にされていたことを覚えているでしょうか。しかし、同時に「自分に関係ない場所で起きていることはどうでも良い」とも口にされていました。

論旨はミソジニーが激しい男性についてどう対処するかの話だったかと思いますが、今でもその考えは変わりませんか? 女性差別に関しては当事者として重々ご承知かと思いますが、被害を受けている人は自分の被害を口にすることが難しい立場にいることが多いです。そんな時に、話を聞いてくれる人や、自分のいないところでも抗議してくれる人がいたらどれだけ心強いでしょうか。もちろん、全てに対応することは不可能ですが、できるなら被差別者のことを慮って行動していただきたいです。

 

④ 民族・人種差別、歴史認識の問題

B社時代も実感することが多かったのですが、日本人は民族差別や人種差別への認識が非常に甘いようです。私は普段から本名を名乗っていますが、わざわざ自分が日本人でないことを口にしてからやっと「そうだったんだ」と言われることがほとんどです。在日朝鮮人の存在を知らない人すらたくさんいました。

酷いときは、知った後ですら、ゲーム業界の労働環境について文句を言った時に「総理大臣になって変えれば良い」と言われたり、選挙権がないことを明かしたら「悩む必要がないから楽で良いですね」と言われたこともあります。周りにいる人は誰もフォローしませんでした。

 

これらは私個人が受けた被害ですが、今、日本ではあらゆる場所で民族差別が横行しています。

在特会」や「ヘイトデモ」というものを知っていますか? 知らないなら調べてみてください。生まれ持った属性だけで「死ね」「出ていけ」「殺せ」と言われることは我々に(限らず、加害されやすいマイノリティ)とっては日常茶飯事なのです。

ネットではそれが表に出やすいですから、皆さんも見たことがあると思います。大きな事件や災害があった時には「犯人は在日」や「朝鮮人が井戸に毒を入れた」と未だに言われます。このような言葉を目にする度、人は歴史から何も学ばないのかと毎回頭を抱えます。

 

bさんは以前、Twitterでの外国人や民族的マイノリティに対するヘイトスピーチについて「歴史問題についてはよくわからない」とおっしゃっていましたが、その後いかがでしょう。少しは調べていただけたでしょうか?

2ちゃんねるや動画サイト、Twitter等が差別主義者だらけになっているのは、よく知らないからと見て見ぬ振りをする人が多いことが原因なのです。かつてネットの常識としてされていた「荒らしはスルー」なる文化もこのような結果を生む要因にしかなりませんでした。

本来なら在日朝鮮人をはじめとした民族的マイノリティがどういった経緯で今日本にいるのかを多少なりとも知ってほしいところですが、せめて差別発言を見かけたら通報だけでもするようにしていただけると助かります。

 

直接関係することではないものの、関連することなので下記についても触れます。

aさんは以前、「歴史もの」について「本当かどうかは大した問題ではない、フィクションの方がおもしろいのだからあれでいい」というような旨を口にされていたと記憶しています。私も司馬遼太郎などの歴史小説は好きですが、あれはあくまで彼なりに史実を調べた上で味付けをした物語だからこそ面白いのではないでしょうか。

現実にあった出来事をモデルにした作品であっても、ゲームの開発現場では「この映画やドラマを参考にしてくれ」などと言われることが多いですよね。しかし、フィクションを参考にしたフィクションとは、もはやそのフィクションの二次創作なのではないでしょうか?

確かに映像や写真などは多いに役立ちますし、ストーリーラインや演出を参考にするのは良いと思いますが、実際の史実の知識の有無は別問題です。怪しい陰謀論にコロッと騙されたりする人や歴史修正主義*5が跋扈する現実を見るにつけ、正しい歴史認識を得るための努力はやはり必要だと感じます。

 

⑤病気への偏見、偏見を助長する表現の軽視、及びそれに対する抗議への反応

aさんが過去にある作品のキャラクターについてハンセン病患者の支援団体から抗議を受けたことを、「いちいちうるさい」と表現されたことを覚えていらっしゃいますか。あまりにもショックの大きい出来事だったのと、②でのやりとりが気にかかっていたとはいえ、その時に「気にした方がいいと思いますけどね」としか返せなかったことは今も悔やんでいます。

自分の事情はともかくとして、件の発言は大きな問題であると改めて指摘させていただきます。ハンセン病という、長い間偏見に晒されていた病気にかかった人々が、世間からどのような仕打ちを受けていたかご存知ないのでしょうか。

キャラクターをどのように作るかは開発者の自由です。しかし、現実に存在する、今なおひどい差別を受けている病を抱えていた人物をフィクションに落とし込むのであれば、そのキャラクター性について、当事者や支援者の方々が敏感になるのは至極当然のことです。偏見を助長する可能性があると批判されたのであれば、真摯に受け止める以外に正解はありません。その上で、当事者や支援者の方の意見を尊重し、話し合いの末に、良き落とし所を決めるのが当然ではないでしょうか。

 

もしかして、自分とハンセン病を全くの無関係だと考えていらっしゃいませんか。患者の方々は今もいらっしゃいますし、完治していながらも、偏見の目が今なお残っているからこそ施設から出られない方も決して少なくはないのです。国からも完全な理解を得ているとはとても言えない状況です。差別と偏見の歴史は絶対に消えませんし、今自分が直接関係していないからといって忘れてはいけないのです。

差別の歴史、現在の状況を理解しないまま「好きにキャラを作らせろ」と主張するのであればそれは差別の助長であり加担、はっきり言って加害行為そのものでしかありません。直接制作に関わったキャラクターでないにしても、今後このような発言を行わないよう大いに反省していただきたいです。

私はこのことについて非常に蟠りを抱えており、自分なりのけじめとして先日ハンセン病資料館に行ってきました。こんなことではお詫びにもなりませんが、少しでも力になれればと思い、少額ではありますが寄付も行いました。封筒の中にパンフレットなどを同封しておきましたので是非足を運んでみてください。ハンセン病について無関心な人にこそ行くべきところです。近代における「診療所」が実際はどんな惨いことををしていたのかを知ってください。単純に勉強にもなります。

 

そもそも、aさんは病気に関して無関心かつ無神経なところがおありのようです。B社時代の話ですが、「鬱病の人って怖いよね」と言われたことを忘れていません。この時私自身は健康な状態でしたが、精神疾患を抱えている身内はいましたし、同僚や後輩が精神疾患によって深刻な状況にあることを知っていました。B社の人たちがその人らにどんなことを言っていたかも覚えています。精神疾患を抱える人々も差別を受けやすいのです。

まずはご自分が知らないことに関して、「知らない」ということをきちんと自覚し、心ない発言をするのをやめていただきたいです。知らないこと自体は罪ではありません。知らないからという理由で偏見を振りまくことがいけないのです。

 

⑥  ”望むような”作品を作る仕事などは存在しないと言われた件

最後になりますが、ある原作つきの仕事の話が来たときのことです。

ネット発の作品がアマチュアゆえか偏見に満ち満ちた表現が野放しにされたまま発表されていることはある程度ご存知ではないかと思います。それ故に、受けるべきかどうかをかなり長時間悩んでしまいました。

この頃私は既にあまりに多くの差別や偏見に晒されていることに疲れ切っていたので、正直に「そういった、差別に加担するような作品であれば可能な限りやりたくない」と言いました。それに対する返答は「ただよしさんが望むような仕事なんてないと思いますよ」というものでした。

それは確かにそうかもしれません。現在の社会にはまだ存在しないかもしれません。しかし、望むような作品になるよう工夫する、今蔓延しているような作品をなくしていく努力をするのが我々がやるべきことなのではないでしょうか?

私が長時間考え込んで煮え切らない態度を取っていたのがよくなかったのかもしれません。その点は申し訳なかったと思います。しかし、少なくとも表現する仕事がどうあるべきかについては同じ意見であると考えていたため、この言葉にはダメージを受けてしまいました。

その後についてはご存知の通りです。

 

以上です。

この文書は決して会社や個人に対する攻撃の意図をもって作成したものではありません。より良い作品を作っていくために、考えていただく切っ掛けになればと思い自分なりに問題点を指摘したものです。

これから先、まずは偏見や差別によって人を苦しめる作品がきちんと批判されるような健全な社会になり、あらゆる人が最初のとっかかりで躓くことなく楽しんでゲームを遊べるようになることを切に願います。

私もそのための努力をしていくつもりです。是非A社さんの皆さんにもそのような考えをもっていただきたいと思っております。

 

⑦人権問題について参考になる書籍の紹介

折角なので差別と人権の問題について知るのに良い書籍を載せておきます。

どれも難解な学術書ではないので読みづらいことはないかと思います。是非読んでみてください。

 

・サッサ・ブーレグレーン(2018)『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』岩崎書店

タイトルにある通りフェミニズムがメインですが、人権問題全般について触れています。子供向けに書かれているのでとっつきやすいと思います。

 

・レイチェル・ギーザ(2019)『ボーイズ なぜ男の子は「男らしく」育つのか』DU BOOKS

「男らしさ」というものが何であり、何故それが良いものとされて、「男らしくない」ものが恥とされているのか、現代社会において改めて考え直す本です。マスキュリズムに苦しむ男性に対する目線が優しいので、読みやすいのではないでしょうか。

 

・金明秀(2018)『レイシャルハラスメントQ&A:職場、学校での人種・民族的嫌がらせを防止する』解放出版社

人種差別や民族差別について知り、考えるきっかけになります。 

 

石田仁(2019)『初めて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで(スッキリわかる!)』ナツメ社

セクシャルマイノリティについて知るには今一番わかりやすい本なのではないかと。

 

⑧脚注

*1:以前勘違いをされていたように見受けられましたので改めて説明しますと、マイノリティとは社会的少数者のことで、社会的弱者とも表記されます。単純な数の多寡の問題ではなく、社会構造的に抑圧、差別を受けやすい人たちのことを指します。

*2:マイノリティに対して差別的な発言をして攻撃することです。一応、最近日本の法律にヘイトスピーチ禁止法が追加されましたが、罰則がないためあまり効果を発揮していません。ただし、川崎市ではつい先日やっと実刑が設けられるようになりました。

*3:アウティングとは、本人の意思を無視して他者にマイノリティ属性(この事件では性的指向)を明かしてしまうことです。本人が隠したがっている秘密を公開するような行いは人権を脅かす行為であり、本来あってはならないことです。

*4:女性嫌悪、女性蔑視と訳されます。主に男性から女性に対する蔑視感情を由来にした構造的差別の問題ですが、女性でも、特に男性の多い場所で過ごすような人は、男性中心社会で生き延びるためにミソジニーを内面化している場合が多いです。

*5:より正確にいうと否認主義的歴史修正主義です。例えば「ホロコースト(近年ではショアと表記するのが正しいとされる)はなかった」「南京大虐殺は捏造」などといった、明らかに誤った情報を史実であるかのように吹聴、喧伝する人々のことを否認主義的歴史修正主義者と言います。現政権をはじめとした政治家にも多いですが、メディアに多く露出する人物であれば百田尚樹氏や高須克弥氏あたりが有名どころでしょうか。『刀剣乱舞』では異なる意味で使われていますが、監修の芝村裕吏氏自身が、アジア圏のファンダムを「大東亜共栄圏」と表現するなど、太平洋戦争を肯定するような語句を用いる人物であることを鑑みると、あえて誤解を招く命名をしているようにも考えられます。