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萌えと忌避感のアンビバレンツ〜ゆめ見る男子のキズナ育成ゲーム『DREAM!ing』の話〜

リリースから1周年を迎える『DREAM!ing』。メインストーリー第2部が公開され始めたという微妙な時期に第1部の感想を改めて書いておきたいと思います。

 

 

▪️『DREAM!ing』とは?

一応、未プレイの方が読むことを想定して説明しておくと、『DREAM!ing』(略称:ドリミ)は『白猫プロジェクト』などで知られるコロプラが開発・運営するスマートフォン用のアプリゲームです。

ジャンルは「ゆめ見る男子のキズナ育成ゲーム」。えっなにそれ? ユーザーだけど意味はよくわかってない。とりあえずメインのターゲット層的に「女性向け」というカテゴリに入りますが、プレイヤーの立場となる視点人物は不在です。主人公=プレイヤーではないということですね。

より詳しい情報を知りたい人は公式サイトなどを見てね!

https://colopl.co.jp/dreaming/sp/

「皆におススメしたい! 」とか「届いてない人に届いて欲しい!」とかそういう善なる気持ちで書くつもりがないので、筆者の主観、価値観が強めに出ると思われます。ご了承ください。

というわけで以下、項目ごとに書いていきます。

 

▪️ストーリー

各界のスペシャリストを輩出してきた名門校「東雲学園」、その中でも選ばれた生徒だけが入ることができる「特進クラス」に第1部の主人公・望月悠馬が入学するところから始まります。

学園を首席で卒業するとどんな夢も叶うということで、キャラクターたちは様々な思惑をもって首席になるべく奔走(一部例外除く)します。首席となる基準は「知力」「体力」そして「人徳」。この人徳をはかるために新たに導入された「ゆめシステム」を用いて、生徒たちは2人1組のペアを組んで「ゆめライブ」に臨むことになる──

途中から様子がおかしくなっていきましたが、本当にそういう話なのです。まずこの設定からして怪しすぎるのですが、「ゆめシステム」とは、眠る時に見る“ゆめ”を他の人間と共有できる謎の新技術です。とんでもねー。その“ゆめ”を自分の意思でコントロールし、思うままに演出して観客に見せるのが「ゆめライブ」です。ゲーム的にはMVの形をとっています。なぜか2人1組でしか行なえません。発案者は強火のshipperなんだと思います。

舞台となる学園の雰囲気については、なんというかちょっと前のまんがに出てくるお金持ち学校という感じです。イメージとしては『花より男子』や『桜蘭高校ホスト部』とか……「ゆめシステム」に限らずわりとトンデモな世界なので、そのあたりはゆるく見るのをオススメします。だがいくらなんでも食堂が有料かつむちゃくちゃ高額なのはどうかな!? 学校が階級差別を肯定していいのか!?

 

▪️「男子ふたり」の関係の濃さ

細かい点についてはさておくとして、ドリミの一番のウリはストーリーのよさにあると思われます。

「ストーリーが良い」はもはや人に何かを推す時の決まり文句というか、いまいちピンとこない言い方なので具体的に褒めますと……ドリミのストーリーの良さは、やはりジャンル名にある通り(さもジャンル名を理解したかのような顔)、男子同士の関係性を重視しているところにあるでしょう。

「ゆめライブ」が2人1組でしか行えない点には触れましたが、その他の部分でも「ふたりの関係」が重要になっています。「ゆめライブ」を行うにあたって彼らはペアを組むことになるのですが、これは基本的に卒業するまで不動の組み合わせです。また、学内の寮も同室となり、生活を共にすることになります。学校という空間で生きるにあたっては避けて通れない、首席を狙うためには向き合わずにはいられない、一蓮托生の関係になるのです。

これだけ推すからには当然、ペアになったふたりの関係を深く描くことは避けられません。というか、それが主軸です。このゲームの全てと言っても過言ではないでしょう。建前ではなく、男子ふたりの間にある感情や惹かれ合う様子を真面目に、茶化さず、丁寧に描いているところが最も評価したいところです。

メインストーリーの第1部では、主人公・望月悠馬とそのペアである花房柳との衝撃的(かつコミカル)な出会いから、友情とも愛情とも言えるような分かち難い絆で結ばれるまでの過程がじっくり描かれてます。

「一要素として」ふたりの関係があるのではなく、「お話の主軸が」ふたりの関係だからこそ投げっぱなしや尻切れとんぼにならず、しっぽまであんこぎっしり、読み手の心を強く揺さぶり、かつ最後はしっかりと安心させてくれる、説得力のある話になっています。メインストーリーを読んでこのふたりを好きにならない人類おるか!? エンドロール後の爽やかさがまたいいんですよこれが……そうそう! こういうのが見たかったんだよー! 

 

▪️メイン以外の要素も色々

システムはこの手のタイプによくある、眺めるだけの面白くないやつです。誰だよこの形式広めたのは。元を辿ればデレマスか!?

その他、各キャラクターを個別に描いたキャラストーリーや、ソシャゲによくあるイベントストーリー等もあるのですが、どれもよく作り込まれています(中には例外もありますが)。面白いかつ情報量が多く発展性があり、キャラからキャラへの感情が重かったり強かったり激しかったり、結構人間関係がこじれまくってるためそういうのが好きな人にも刺さると思います。

個人的に、キャラ同士の会話の応酬が非常にテンポが良く小気味よく感じて気に入っています。語彙や表現がけっこう独特で「その表現を選ぶんだ!?」と思うことが多々あり、読んでいて飽きません。区切るタイミングもちょうど良くてダレないというか、ま〜とにかく会話が上手なんですよね。

レッスン中に発生する「おしゃべり」なんかはひとりにつき1メッセージずつという短いテキストでよくこんなにキャラ同士の関係性と会話の楽しさを表現できるな〜と感心しきり。

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あと、地味に「ゆめ日記」という機能が気に入ってます。一定時間放置してアイテムを入手するというこれまたよくあるやつなんですが、特筆すべきは“ゆめ”という作中ワードと放置時間との親和性の高さ、そしてランダムに見られる日記です。

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なによりSDキャラがカワイイ。

 

▪️倫理的に問題大あり

で、ある意味ここからが本題なのですが……事実ストーリーはとっても気に入ったのですが、めちゃくちゃ気になったのは根底にある倫理観がかなり、信じがたいレベルで古臭かった点です。ジェンダー観なんて何年まえのゲームだよと思うほどやばい。

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2019年とは思えない発言。

このゲーム、女性はほとんどモブとしてしか登場しないのですが、基本的にメインキャラにキャーキャーいうだけの存在です。かなりこう、あのー、その場の空気に流される軽率な……いや……はっきり言ってアホな存在として描かれています。メインストーリーに限らず全編通してそんな調子です。メインキャラの描き方は良いのに……と思いましたが、そのキャラがもっている価値観もほぼもれなく古いのでその辺はかなりマイナスです。悠馬は普段は優しくていいこですが、妹に対する態度がそこはかとなく支配的で、将来家父長制バリバリの大人にならないかユーザーを不安にさせます。

せっかく同性同士の関係を濃く描写してるのにこの世界自体が異性愛規範に縛られまくってるとはいかに……おお……コロプラよ……彼らに自由を与え給え……

あとあのあれね、身分や資産や結婚とかいうものを本気でステータスと考えてそうなのはどうにかしてほしいと思います。

 

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というか生徒発見(ゆかりのある駅にキャラのポスターが掲示されるというリアルイベント)の時の駅のチョイスからほんのり漂っていた権威主義と排外主義の香り、気のせいだと思いたいけどもうそろそろ無理かな〜!?(コラボイベントの傷が癒えないそれがしであった)

 

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お気に入りのスクショで無理矢理締めます。