それがしブログ

ゲームと美少年と姉弟と草の根人権活動

『十三機兵防衛圏』が危険であると断ずるおよそ三つの理由

発売してから結構経っていますし自分の記憶もだいぶ曖昧になってきましたが、そろそろ『十三機兵防衛圏』というゲームの危険性について書いておきたいと思います。

さようなら、愛していました『オーディンスフィア』。

 

 

『十三機兵防衛圏』とは

ヴァニラウェアが開発し、アトラスより販売されているPS4用ゲームソフトです。13のロボット(”機兵”という)に13人の学生たちがパイロットとして搭乗し、迫りくる謎の怪獣たちと戦い、自分たちの街を守る……というのが表向きのあらすじです。


主な舞台となるのは1980年代の日本で、その頃に子供時代を過ごしていた大人にノスタルジーを感じさせる作りです。ビジュアルはさすが『オーディンスフィア』『朧村正』などを手掛けていただけあって非常にクオリティが高く、イラスト調のキャラクターや背景、横スクロールのゲームが好きなゲーマーにはたまらない出来になっています。

 

ジャンルはアドベンチャーRTSリアルタイムストラテジー)。
13人の主人公の物語を任意の順番(一部制限あり)で進行させていくアドベンチャーパートと、怪獣と戦うRTSパートとを好きなタイミングで攻略していき、最終的に両方クリアするとエンディングを迎えることができます。

アドベンチャーパートの流れ自体は良くできており、同じ事象を複数の視点から描くことで他のキャラクターの事情に興味を持たせる作り、続きが気になる引き、謎が謎を呼ぶ展開など、この点は素直に賞賛できます。RTSパートについては、まあ、なんと言うかクオリティは高くないです。嫌いではないですが。

しかし、ゲームや大まかな話の流れが良くできていたとしても、否、だからこそこのゲームを手放しで褒めるわけにはいかないのです。

 

以下、ネタバレを含みつつ何が危険なのかを書いていきます。

 

①女性キャラクターの描き方に問題がある

発売前のPV(高校生の女の子がスカートをたくし上げ、太腿を手でなぞると、後ろに巨大なロボットが出現するという演出)(もうなんかこれだけでお腹いっぱい)から予測できたことではありますが、いくらなんでもそれはないだろうと思うほど女性キャラクターの描き方が古いです。

元々ヴァニラウェアのタイトルは、(特にサブキャラクターとして配置されている)女性キャラの身体的特徴がやたらと強調されていることが多かったですが、それでも概ね成人していましたし、サブキャラだからそこまで目立つものではありませんでした。

しかし、今作の場合は主人公です。そのうち二人に関しては看過できないレベルでした。一人は転んだ拍子にパンツが見える、一人は体操服を脱いで下着が見えるまでの一連のモーションがわざわざ懇切丁寧に作られており、その上、この映像は公式サイトに行けば嫌でも流れるのです。
このゲームはCERO:C(15歳以上推奨)ですが、特にエロを売りにしているタイトルではありません。評判が気になって見に行った人に対するセクハラとも言えるのではないでしょうか?

その他にも、作中で女性キャラへの身体的特徴がやたらと言及されたり、問題のある箇所が多く見られました。古いです。色々な意味で古いです。そもそもですよ、主人公の一人が始終体操服(ブルマー)でいる時点で、そのために1980年代をメインの舞台にしたのではないか? と疑いたくなるというものです。しかもその割にスカートの丈は短い。なんで?

極め付けは、公式Twitterでのカウントダウンイラスト。高校生の女性キャラが局部にのみ機兵のパーツを身に付け、それを成人男性が後ろから眺めているというものでした。よりにもよって社長作。つまり会社がそういう体質であると自ら公言しているようなものです。あまりにもあんまりなのでここには貼りませんが、検索すれば出てくるので気になる人は探してください。

 

侵略戦争の歴史を無批判に(乃至は美化して)垂れ流している

実はこの作品はタイムトラベルやら何やらといった時間移動のようなシステムを駆使したSFなのですが、あるシーンで、未来の日本人と思しき人物(歴史好き)が以下のようなことを言います。

1940年代はイデオロギーの転換点となった興味深い時代だ。もし自分が生まれ変わるなら、この時代がいい。 

さて、ご存知の通り、1940年代といえば太平洋戦争真っ只中の時代です。死にたいのでしょうか? しかも侵略戦争を行なっていた時代、自国の負の歴史であるわけです。こんなセリフを言わせるとかふざけているんでしょうか。そもそも本当に敗戦後の日本が軍国主義から平和主義になったと本気で思っているのでしょうか!? 開発側の歴史認識の甘さが際立っています。

作中でも1940年代(に見えるところ)が舞台になることがあり、 「祖国のために命を散らす覚悟」「本土決戦に持ち込んで勝つ」などとのたまう軍人や動員された学徒などが登場します。別にそういうキャラがいるのは構いませんが、この時代の思想が、特に批判的に言及されることなくカッコいいものかのように描写されているのが大問題なのです。

彼らは機兵の力で(詳細は割愛します)1980年代にタイムトラベルしてしまうのですが、歴史の教科書などで敗戦の過去を知るや、「機兵の力で今度こそ勝つ」というようなことを言います。1980年代以降に生きるキャラは彼らを止めますが、理由は「危険だから」の一点です。何を言っているんでしょうか。公式サイトのキャラ紹介から怪しい気配は漂っていましたが、この時点で自分は「もうこのゲームはダメだ」と感じました。

 

③ちゃっかり民族浄化されている

街を守るために怪獣と戦うのは表向きの設定で、実はタイムトラベルなどもあるSF……と前段で触れましたが、そもそも、それら全てが茶番だったというのがこのゲーム最大のネタバレです。人類はすでに滅んでおり、作中で行われているほとんどの事は、「わずかに生き残った人間の遺伝子を地球に似た環境の星へ飛ばすという方舟計画」の中で行われているシミュレーションでしかないのです(例によって面倒なので詳細は割愛します)。

まあ、それはいいです。いいのですが、この「生き残った人類」、なんと日本人しかいません。おそらく大和民族、和人だけです。仮にもSFを謳いながらそんなことがあってもいいんでしょうか。いやそれ以前の問題として、民族浄化という恐ろしい所業がなされていることに開発側は誰も気づかなかったのでしょうか?

作品最後のオチでこれをかまされて許せる人間は相当鈍感と言わざるを得ません。さすがはガラパゴスジャパン。あ〜〜〜ガラパゴスい。こんなもの海外に輸出できると思うなよ。国内でも大問題だっつーの。

それ以外にも地球に似た環境の星をテラフォーミング(地球と同じ状態にすること)するというのもあまりにも地球人本位すぎてどうかと思います。環境破壊が問題になっている現代でこれって。他の星の環境まで破壊したいのか。

 

まとめ

以上3つが、自分が「このゲームが批判されずに評価だけされているのが危険だ」と判断した大まかな理由です。
しかしこれ以外にも「最終的に異性愛カップルが量産される」「同性愛カップルと思しき二人組だけはっきりと関係が明示されない」「結局は産めや増やせのおぞましい異性愛至上主義から脱し切れていない」「すでに制度なんて存在しないはずなのに”結婚”している」「異性装を変態と表現する」などなどなどなどの数え切れないほどの問題があります。

こういった問題をあまり簡単に表現するべきではないのですが、それでも簡単に言いますと、古いのです。古すぎるのです。古すぎる価値観に執着したおっさん的存在たちの懐古趣味には付き合ってられません。それこそ1980年代に発売されていれば許せたかもしれませんが、しかしながら、今は2020年(発売は2019年)です。おっさん的存在がノスタルジーに浸るための作品が作られるばかりか、ユーザーにまで評価されてしまっている事態には頭を抱えるばかりです。

 

それでもこのゲームを好きだと言うファンの方には、批判すべき点はちゃんと批判してくれることを切に望みます。

そして、購入前の方。引き返すなら今のうちです。